性感染症について
アンドロギュノスという言葉を聞いたことがありますか?

ギリシャ旅行中、添乗員さんが幾つか話してくれたギリシャ神話の中のひとつ。 アンドロギュノスという、男性と女性が背中合わせにくっついている不思議な生き物がいました。 二人は、仲良く互いに尊敬しながら暮らしていましたが、しだいにお互いの顔を見たくなり、 神様にお願いして背中を離してもらいました。しかし神様はそんな二人を心よく思わず、 試練を与えるため遠く引き離してしまいました。遠く離れ離れになった二人は、ずっと互いを想い探し続け、 幾多の困難にも耐え、とうとう再会することができたという話です。

人間は元々アンドロギュノスであり、背中合わせの相手を探し続けているといわれます。 これが恋人や夫婦が愛し求め合うわけなのだと。 今、あなたの隣にいる人はアンドロギュノスだった頃の大切な人ですか?

 長いバカンスが終わってキャンパスに賑わいが戻ってきました。 この季節になると、性にまつわる悩み、排尿する時痛みがある、悪臭のするおりものが出ている、 症状はないけれどエイズにかかったのではないかとか訴えて、保健管理センターに相談に来る学生がいます。

そこで、今回は、性感染症についてお話します。
1.STI(性感染症)=Sexually Transmitted Infections=STD(Diseases)=セックスでうつる病気の総称
愛し合う二人にとってセックスは、いつも一緒にいたい、感じていたいと、お互いを共有していたいと思う人達の大切な営み、コミュニケーションです。 でもセックスによって、病気がうつることもあるのを知っていてください。 STIをそのまま放っておくと、特に女性は生涯にわたりダメージが大きく、流産、不妊症、胎児の病気などの原因につながったりします。 STIで忘れていけないことは、セックスが感染経路ですから片方がSTIならば、パートナーもSTIだと考えてください。 「もし、自分に原因がある」と思えたら、言いにくいことですが、必ずパートナーに伝え、同時に治療しましょう。 男性は泌尿器科か性病科、女性は泌尿器科か婦人科を受診してください。
病名 どんな病気? 症状は? 治療法
エイズ   HIV(エイズウィルス)によって体の免疫が壊され、様々な病気になる。 平均10年の潜伏期を経て発病。免疫がしだいに低下し、発熱や下痢のくり返し急激な体重減少等、最悪は死に至る。 複数の抗ウイルス剤投与で発病を抑える(遅らせる)ことができる。
淋病 淋菌という細菌によって、うつる。 男性→排尿時激しい痛み、排尿口より濃がでる。 女性→外陰部の発疹、悪臭のあるおりもの、下腹部の痛み、頻尿。 抗生物質の服用。
クラミジア 病原体はクラミジア・トラコマティスという細菌。感染が子宮や卵管に広がると不妊の原因に。 男性→尿道に不快感 女性→おりものの増加がみられることもあるが自覚症状がほとんどなく、気づかないことが多い。 病院で検査をうけ、抗生物質を服用する。
性器ヘルペス ヘルペスウイルスが性器に付き、炎症をおこす。 感染して2週間位から米粒大の水疱がでる。激しい痛みがある。 抗ウィルス剤、軟膏により治療。
尖圭コンジローム 病原体はヒト乳頭腫ウイルス。子宮頸がんとの関連がある。 性器にイボができる。かゆみや痛みがある。 イボを手術で切り取ったり、焼き切ったりする。
トリコモナス トリコモナスという原虫による。膣炎が多い。 男性→排尿痛、分泌物の増加。 女性→患部のかゆく熱をもち、悪臭のあるおりもの。 トリコモナス症の治療薬(内服、膣座薬)。
梅毒 細菌(梅毒トレポネーマパリヅム)によってうつる。 感染後2週間位で外陰部や肛門周辺にしこりができる。いったん消えるがその後発熱や倦怠感、足の付け根のリンパ腺が腫れたり、発疹がみられる。初期から晩期と症状が変わり血管や神経、脳が侵される。胎児にも感染する。 抗生物質の服用。
カンジタ膣炎 真菌(カビ)のカンジダ・アルビカンスが引き起こす炎症。 おりものが白いカッテージチーズのようになる。かゆみと外陰部のただれ。 抗真菌剤の膣錠、クリーム剤を外陰部に塗る。再発しやすい。清潔に保つが膣内を石けんで洗うのはやめる(膣の自浄能力が低下し逆効果)。
2.Safe Sex=安全なセックス
セックスは、愛し合う二人の大切なコミュニケーションでありながら、一方ではSTIに感染するかもしれないという危険があります。 STIを防ぎ、安全なセックスはないのでしょうか?

(1)お互いにSTIから身を守るためには、信頼し、愛情が持てる人とだけの1対1のセックスが大事です。 この場合でもコンドームは必ず使って下さい。もし過去に不安材料があれば、医療機関で検査を受けること。 もし、陽性とでたら治療する、陰性であれば安心してセックスができます。
(2)STIの予防には不特定多数の人とのセックスは絶対に避けてください。 一晩限りと楽しんだアバンチュールがあなたの人生をまったく変えてしまい、本当に大切なパートナーとの関係も終わってしまうかもしれません。 といっても、セックスは個人の自由です。この場合、コンドームを必ず!必ず!使用してください。 コンドームをつけた場合、妊娠を防ぐことができることの他、粘膜と精液、膣分泌液が混じりあうことがないため、STIの予防につながるわけです。 コンドーム使用でSTIから身を守れることを覚えておいてください。

アンドロギュノスだった頃のあなた達にもどって、お互いを大切に、お互いのからだを守ってください。

★ミニメモ★
STIと、もう1つ、セックスの結果は、妊娠の有無です。妊娠を望まない人は確実な避妊が必要です。
ただ、避妊が失敗した時は、緊急避妊ピル(アフターモーニングピル)での対処法(あくまでも緊急時)もあることを、知っていてください。
方法:72時間以内に産婦人科を受診し、緊急避妊用の中用量ピル(避妊用の低用量ピルではない)を二錠服用、その12時間後に、さらに二錠服用する。
一般に排卵日の妊娠率は25%とされるが、この方法で2〜3%に抑えられる。