肝臓とメタボ
生活習慣の欧米化によりメタボリック症候群(メタボ)が増えています。メタボは、腹囲85cm以上(男性)、90cm以上(女性)で、かつ@中性脂肪高値(≥150mg/dl)かつ/またはHDLコレステロール低値(<40mg/dl)、A収縮期血圧≥130mmHgかつ/または拡張期血圧≥85mmHg、B空腹時血糖≥110mg/dl、のうち2項目以上を満たす場合です。日本人の3大死因は悪性腫瘍、心疾患、脳血管障害ですが、メタボはこれら疾患と密接な関係があります。高血圧や高脂血症、糖尿病が心筋梗塞や脳梗塞と関連があるのは理解できると思いますが、メタボは悪性腫瘍のリスクも高めます。例えば、メタボがあると大腸がん、乳がんは約2倍の頻度になると言われています。まさに、メタボは日本人の「万病の元」なわけです。
メタボの多くはBMI≥25以上の肥満者ですが、メタボあるいは肥満者は脂肪肝を伴っている方が多く、非アルコール性脂肪肝(アルコール多飲者も脂肪肝になるので分けています)は肝臓におけるメタボの表現型である、と言われています。実際、人間ドック受診者の約30%に脂肪肝がみられ、脂肪肝のある方はメタボを伴う率が高くなります。日本の成人肥満人口は約2300万人、脂肪肝は1000万人と言われています。このうち1割の100万人が脂肪肝炎になり、その一部は肝硬変、肝癌に進行すると考えられています。日本で、現在最も問題となっているウイルス性肝炎は今後減少し、20年後、30年後にはこの脂肪肝が最も問題になっているかもしれません。
医療の進歩によりヒトの平均寿命は画期的に延びました。多くの感染症が克服され、生活も便利に、食べる物も豊富にありますが、このような生活環境で長生きできるようになったことで、メタボが大きな問題となっています。昔の不便な生活には戻れませんが、毎日少しの運動(早足歩行30分)と腹八分目でQOL(生活の質)を保ちながら長生きできたらと思います。
2013.4.15